2005年09月06日

無人

学生の頃はいわゆる新聞少年でした。
住み込みで配達のバイトをするやつです。
集金に回ることもありました。

一人暮らしのマンションは夜にまとめて集金に伺います。
中には夜10時を過ぎても帰宅していないらしい家もあるので、なかなか集金には苦労しました。

あるとき、どうしても集金できない家がありました。
伝言を残しても販売店まで来てくれません。
こんなときは、朝早くの配達途中で集金します。
朝は誰でも忙しいので、嫌な顔をされますが仕方ありません。

そのとき集金に行った家は、オートロックタイプのワンルームマンションでした。
配達終わって、少し時間を潰してからその家に行きました。
それでも朝6時くらいだったので、人によっては寝てるかも知れません。
でもしょうがないので玄関ホールから呼び出しチャイムを鳴らしました。

鳴らしてしばらく経って、「・・・はい」と男の人の声がしました。
寝起きなのか、ひどくテンションの低い声でした。
集金に来たことを告げたら、黙ってオートロックのドアが開きました。

エレベータで目的の部屋へ行き、玄関のチャイムを押しました。
チャイムの後にちょっと間があって、かちゃりと鍵を開く音がしてドアが少しだけ開きました。
が、いくら待っても人が出てきません。

仕方ないのでドアを引いてみました。
やっぱり玄関には誰もいません。
「すいませーん。○○新聞ですー」
声をかけましたが、反応がありません。

何度声をかけてもチャイムを鳴らしても、反応がありません。
奥の部屋からはテレビの音が聞こえています。
人がいるのは分かっているので、「あがらせてもらいますよ」と言いながら靴を脱いで上がり込みました。

居間のドアを開けると、やはりテレビがついていました。
けれども、部屋には誰もいません。
念のためトイレ兼シャワーも音を確認してから開けてみましたが、誰もいません。
さすがに気味が悪くなってきたのですが、開き直って押入まで確認しました。

結局、人がいないのであきらめて帰ることにしました。
無人の家なので、余計なこととは思いましたがテレビは消しました。
鍵はかけられないのでそのままです。

玄関を出てドアを閉めてエレベータへ向かいかけたのですが、ふと気が変わって引き返しました。
そしてゆっくりドアを引いてみましたが、鍵がかかっていました。
ホテルのドアと同じようなものでしょうか。
誰もいないのは分かっていましたが、ついチャイムを押してみました。
がちゃり
音がして、ドアが開き始めました。
今度はすかさずドアをつかんで自分で開きました。

しかし、そこには誰もいませんでした
全身に鳥肌が立ち、猛烈な寒気に襲われ、階段を駆け下りてマンションから飛び出しました。

店長に今までの出来事を話しましたが、勝手に家に上がるなと怒られただけでした。
それから他のバイトがその家に行ってみたようですが、最初から何の応答もなかったそうです。
仕方がないので新聞の配達は止めて、あとは店長に措置を任せました。
問題の部屋はすぐに空き部屋になったようですが、その後ずっと人が入ることはありませんでした。
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2005年08月16日

ご先祖の里帰り

小学生ぐらいの頃は、毎年夏休みには田舎の祖父母の家へ遊びに行ってました。
両親が共働きだったので、留守中に子供一人で危ないためでもあったと思います。
そして、お盆休みの頃だけ両親も祖父母宅へ来ていました。

田舎で過ごす時間は、何かと楽しかったと覚えています。
近所の子供達ともすぐ仲良くなって、一緒に遊んでいました。
山や川で遊んで、虫取りや魚釣りを教えてもらいました。

でも、夜になると一人で退屈なことが多かったです。
見たいテレビ番組がないと、おもちゃも漫画もなかったので退屈でした。

ある日、村の集会で祖父母が外出してた日がありました。
お盆休みで両親も来ていたのですが、別の大人の集まりで出かけていました。
私は一人留守番です。
テレビにも見飽きたわたしが興味を持ったのは、蚊取り線香でした。

ライターで蚊取り線香に火を付けました。
先じゃなくて途中から火を付けてみたり。
上に紙切れを置いて、次第に焦げていくところを眺めてみたり。

そのうち、炎の上がらない蚊取り線香よりも、紙を燃やしたほうが楽しいと思い始めました。
新聞紙をちぎって灰皿の上で燃やしました。
何度か繰り返すうちに、もっと長く燃やせないかと考え始めました。
そして、新聞紙を丸く筒状に加工しました。
下から火を付けてゆっくり燃える様を見ようと。

わくわくしながらライターで点火しようとしたとき、ふと後ろから手を押さえられました。
ふりかえると、知らないおばあさんが座っていました。
少し怒った顔をしていたけど、優しそうな顔をしたおばあさんでした。

そんなことをしてはいけない、というおばあさんに、退屈でしょうがないと文句を言いました。
おばあさんはどこからかお手玉を取り出して、やってみせてくれました。
見たことがないくらい上手なお手玉でした。
わたしにも教えてくれました。
祖父母が帰宅するまでの間、夢中になって練習したりおばあさんに見せてもらったりしました。

そのうち、玄関で祖父母が帰ってきた音がしました。
わたしは喜んで出迎えに行きました。
が、二人を連れて居間に戻ったとき、あのおばあさんはいませんでした。

一人で留守番できて偉いねと言う祖父母に、おばあさんと遊んでいたことを話しました。
お手玉が上手なおばさんというと、おじいさんは納得したようでした。
○○のばあさんだなと。(○○は多分地名だと思います)

そのおばあさんはお手玉が上手でよく見せてくれたそうです。
おじいさんが子供の頃に。

きっと、お盆で里帰りしていたおばあさんなんだと思います。
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2005年07月26日

隠せないタブー

小さな頃から怪談話が好きで、夏休みにはお昼に放送する「あなたの知らない世界」が大好きでした。
大人になってから、インターネットのサイトを開きました。
子供の頃から聞き覚えた怖い話を、思い出すままに書き連ねていくサイトです。
素人の手作りサイトではありましたが、細々と続けていくうちにお客様も増えていたようです。

ある読者の方からメールをいただきました。
自分のこんな体験を掲載して欲しい。と。
正直自分の記憶だけに頼っていてはネタが尽きそうだったので、それを機会に怖い体験談を募ってそれも掲載するようになりました。

何人かの方から体験談をいただきました。
でも、一番多くのお話を寄せてくれたのは、最初にそのメールをくれた人でした。
その人を仮にAさんとします。

掲載している話が増えたので、サイトを整理してみることにしました。
投稿談も分類し、特にAさんは数が多いので専用の分類をもうけました。
そうしてAさんの話を見比べてみると、ある特徴に気が付きました。
Aさんの親類やAさんの田舎などにまつわる話が多いのです。
他の人にあるような、「ある日偶然町で遭遇した」と言う類の話はありませんでした。

Aさんの叔母さんが子供の頃に見た不思議な生き物の話。
実家のご近所さんの蔵にあった奇妙な組木細工の話。
田舎へ通じる道にある7つのお地蔵さんの話。
おじいさんが若かった頃の写真に写るご先祖の話。

全部Aさんの作り話だったのかも知れませんが、どの話も創作とは思えない素朴なリアリティがありました。
それに話の内容にこれだけ偏りがあるのも、体験に基づく話だからだと思いました。

あるとき、Aさんからいつもとは違うメールが来ました。
今まで掲載した話を削除して欲しいとのことでした。

実家の親類に私のサイトの存在が知られた。
話の内容から、Aさんが話を提供していることが分かってしまった。
そして、Aさんに注意というか警告が来たそうです。
Aさんの話は、いろいろと地元の禁忌に触れる話だったそうです。
そのことでかなり怒られているようでした。
これは嘘だと思いましたが、Aさん自身の身も危ないのだそうです。

もったいないとは思いましたが、Aさんの話はすべて削除しました。
削除したことをメールで伝えましたが、Aさん宛のメールはunknownで戻ってきてしまいました。


あれから数年が経ちました。
インターネットは当時と比べて格段に進歩し、たいていのことはネットで調べてどうにかなるような時代です。
私の個人サイトは既に閉鎖していますが、あいかわらずネット上で怪談話を読むのが好きです。

そのなかに、私がAさんから聞いた話と非常によく似た話がありました。
昔の私のサイトを読んだ人が転用したものなのか。
Aさんと同様に、その地域で育った人が書いたものなのか。
詳細は分かりません。

インターネットに流れた情報は、容易にとめることができません。
それを読んだ人たちは大いに興味をそそられて、勝手にいろいろ調査を進め始めたようです。
私のサイトには書きませんでしたが、今回はAさんの地元の実名まで知られました。
興味本位で近づく人たちがAさんの地元のタブーに触れたとき、何か良くないことが怒るのではないかと心配しています。
posted by 黒鳥 at 01:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 041〜050 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月09日

鏡越しの顔

夜に帰宅するとき、いつもの電車に乗り込んだ。
最初は空いているが、いつも後から混んでくる。

目の前に一人の若い女性が立っていた。
開かない方のドアを背に、文庫本を読んでいる。
長い黒髪の地味そうな子だった。
自分はちょっと距離をおいて立っていたが、次第に乗り込んでくる人に押されて近づいてしまう。

真正面から女性と向き合うのも気まずいので、ちょっと身体をずらしてあげた。
ふとドアのガラスを見ると、外が暗いので自分の顔が映って見える。
すぐ隣には例の女性の後ろ姿が。

なんとなく違和感を感じて、よくよく見てみた。
ガラスの鏡越しに。
光の反射の関係か、女性の髪がやけに白く見える。
目の前の実物女性は、ちゃんと黒髪なのに。


さらに車内が混んできた。
女性とかなり密着してしまう状況になった。
あまりに近いので、女性も本を読んでいられなくなった。
こちらに背を向け、窓の外を見ている。
やっぱり女性の後頭部も髪は黒かった。

すぐ隣でイヤホンを付けた若い男性が、混んでいる車内でやけにソワソワし始めた。
顔を伏せて、ちらちらと目線を上げたり下げたり。
それに妙に身体を突っ張って、ドアから離れようとしている感じだった。

その原因は自分にもすぐ分かった。
ドアガラスの鏡越しに見える女性の顔が、白髪の老婆の顔だったからだ。

女性はしっかり立っていて動かない。
だけど鏡越しのその老婆は、首をかしげながらこちらを交互に見上げている。
明らかにその男性とこちらを見ているようだった。

例えば道で幽霊に出くわしたとしたら、一目散に逃げるだろう。
だけど混んでる車内で、得体の知れないものに密着させられている。
必死で女性から離れようと動いて、周りから肘打ちされたりした。
隣の男性は、必死な顔でイヤホンをちぎるように耳から外していた。

ようやく駅について、二人同時に「降ります!」と叫んで人混みをかき分け、反対のドアから飛び出した。
そして振り返ると、まだ車内にはたくさんの人がいるのに、ホームの向こうのドアに映る老婆が人の隙間からはっきり見えた。
電車が発車して動き出すまでの数秒間、ずっと老婆はこちらを見ていた。

電車が走り去った後、一緒に呆けている男性と目が合った。
言わなくても分かるが、一応聞いてみた。
「君も見ましたよね?」

同時に彼も口を開いた。
聞こえましたか?

彼のイヤホンから、音楽の代わりに老婆が何か呟く声が流れてきたそうだ。
今も耳に残って離れないと言う。

あれが何だったのか一切分からない。
ただ、あのときイヤホンを使っていなくて良かったと思った。
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2005年06月04日

許されていない過ち

仲の良かった先輩が職場を辞めて、家業を継ぐために実家に帰りました。
それから半年ほど経ってから知ったのですが、先輩は実家の裏山にある川に身を投げて亡くなったそうです。
帰ってから一ヶ月ほどでのことだったそうです。
家業が行き詰まっていたわけでもなく、一緒に田舎へついていった奥様も原因の心当たりが無いらしいです。

先輩が会社を辞めるときの送別会の帰りに、電車で二人きりになったときに聞いた話を思い出しました。


先輩が産まれ育ったのは北関東の山間部で、実家の裏が山になっていてよく遊んだそうです。
2つ下の弟がいて、しょっちゅう山の中に行って追いかけっこしたりヒーローごっこをしていたそうです。

先輩が小学校1年生の時、一緒に遊んでいた弟さんが川に落ちて亡くなりました。
両親はとても悲しんでましたが、先輩に対してはあまり怒ったりしなかったそうです。
兄が目を離したのは悪いけど、事故はしょうがないと。
それからは高校を卒業するまで実家で暮らしていましたが、裏山に行くことは禁止されていて、二度と行くことはなかったそうです。

でも、実際には何度か行ったことがあるそうです。
一度目はただ遊びに。
その後は、そこにまだ弟さんがいるのかを確かめに。

何年かおきに山に行くのですが、いつも同じその場所に弟さんが立っているそうです。
そして、まだ自分が許されていないことを知るのだそうです。

「でも、事故なんだから、弟さんも先輩を恨んだってしょうがないじゃないですか」
理不尽で不思議な話に口を挟みました。
「遊んでるときにあいつを突き落としちゃったんだよ
そう言って先輩はうつむいていました。

高校を卒業するまで弟さんはそこにいたそうです。
それから実家を出るために無理に進学して上京し、就職して実家にも帰らなかったそうです。
ずっと帰らないつもりだったけど、どうしても実家の都合で今回帰ることになってしまったそうです。


実家に帰ったとき、弟さんがまだいたのでしょうか。
今となっては確かめることはできません。

posted by 黒鳥 at 01:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 041〜050 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月23日

彼女の最後の姿

3年ほど通い続けている美容院があります。
なじみの美容師さん(Aさん)をいつも指名していて、お互いのプライベートなことまで話す仲なのです。
いつも指名するのはAさんですが、他のスタッフも顔なじみです。
中でも受付と会計をいつもしてくれる子(Bさん)は明るくてかわいい子なのでよく覚えていました。

昨日髪を切りに行ったとき、受付はいつものBさんではありませんでした。
あれ。めずらしいな。とは思いましたが、特に不思議には思いませんでした。

カットしてもらってる最中にちょっとAさんが離れたとき、鏡の中にBさんが見えました。
やっぱりいるじゃん。
鏡越しにBさんへ手を振ってみました。
けれども気づいてくれません。
あんまり派手に手を振るのも変なので、そのときは挨拶をあきらめました。

Aさんといつものたわいない会話を楽しみながらカットを終えて、会計を済ませました。
このときもBさんは見あたりませんでした。

帰宅する途中、Aさんから携帯にメールが届きました。
いつもの「ありがとうございました。またお願いしますね!」てな感じのメールです。
こちらも、「ご挨拶できなかったけど、Bさんにもよろしくお伝えください」という内容のメールを送りました。
すぐに来た返事には「Bさんは先週で辞めたよ」とのこと。
さっき店内でBさんを見たことをすぐメールしました。
すると、Aさんからの返事は来なくなりました。


その後、Aさんはお店を変わりました。
連絡をもらったので、私もAさんのいる新しいお店へ行くことにしました。
そこで、前回のことを教えてもらうことができました。

以前のお店ではスタッフ同士のいじめがひどくて、Bさんも悩んでいたそうです。
そして、突然店に来なくなってしまったそうです。
私が店に行ったときには既に解雇が決まっていたそうです。
で、私からのメールを受けて、慌ててAさんたちが店内を見て回ったそうです。
行方不明だったBさんは、スタッフ控え室の奥の物入れで首を吊っていたそうです。

発見したのがまだ営業中で、大騒ぎになってしまったそうです。
結局他のスタッフも辞めたりで散り散りになり、お客も減って閉店寸前だそうです。

話を聞いて疑問に思ったことがあります。
私が鏡で見たBさんは、亡くなる直前の最後の姿だったのでしょうか。
しばらく音信不通だったBさんが店内に現れたら、誰か気づいて話しかけると思うのですが。
Aさんはまだ何か話してくれてないような気がします。

AさんとBさんとの関係がどうだったのかを本人に聞くわけにもいかず、今後もAさんの元に通うかどうするか迷っています。
posted by 黒鳥 at 01:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 041〜050 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月07日

ここも敷地内だった

わたしの会社の隣には駐車場があった。
そこに、去年からビルの新築工事が始まった。

更地だったところを掘り返し、地下からの工事をしている。
地上にはフェンスが張り巡らされているが、隣のビルからは中の様子がよく見える。
だんだんと地下深くまで掘り下げられている様子が、日々見て取れた。
最初のうちは「朝顔の観察日記みたいに写真撮ってみようか」などと職場の友達と冗談を言い合っていた。

何日か経つとだれも窓から眺めなくなった。
観察に飽きたせいもあるが、それだけではないような気がした。
窓から工事現場を見下ろしていると、なんだか焦燥感のようなものが沸き上がってきた。
吐き気のようなものも感じた。
窓際の会議卓も敬遠されるようになっていたから、みんなも同じような感じだったのかも知れない。

ある日、工事現場に救急車が来た。
作業員が運び出されたそうだ。
ちょうどその頃、夜に工事現場で人魂を見たとかいう怪談話も社内で広まっていた。
「多分あの地下には死体が埋まってるんだよ」などと言う噂もあった。

勝手な憶測を隣でしていると、ある朝に工事現場でイベントが行われた。
地鎮祭のような神主さんではなく、お坊さんらしき人が来ていた。
改めてご供養をする羽目になったんだなと想像した。

工事現場の人に直接事情を聞くわけにはいかなかったが、同僚が証拠を入手してきた。
写真週刊誌の記事にその現場の話題が出ていた。

「昔の豪族が村人や使用人を惨殺して埋めた跡地が見つかった」とか言う内容だった。
地元の古い記録と、今回の工事現場の様子が一致していたらしく、実際に人骨が出てきたそうだ。

記事には当時と現在の地図の比較もあった。
昔の異常者がたくさんの死体を埋めたと言われる箇所は、まさしく工事現場とうちの会社の敷地だった。

それを知ってからは、なるべく夜に一人で残業しないように、地下の倉庫に用事を作らないように気を付けている。
posted by 黒鳥 at 09:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 041〜050 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月02日

警察の怪談

ある夜中に車を走らせていると、道端で一台の車がハザードランプを灯して停車しているのに気がついた。
運転手らしき人が道に倒れている人を救護しているのに気がついて、慌てて自分も停車した。

倒れているのは若い女性で、目立った外傷は見られなかったが、夜中なんでよくわからない。
先に救護していたその人は、大丈夫。息はある。と言っていた。
救急車を呼ぼうと言うと、自分たちで運んだほうが早いという。
で、彼の車は座席に荷物が満載なので、こっちの車に乗せようと言い出した。

倒れている人は動かさないほうがいいのでは?とは思ったが、一刻を争うような彼の慌てた様子に押されて承諾した。
車の後部座席に二人で運び上げる最中に聞いてみたが、彼も女性が路上に倒れているのを見つけただけで事情は知らないらしい。

自分はこのあたりに詳しくないので、救急病院の場所がわからない。
彼にそう言うと、先導するからついて来いと言う。
ところが、いざ自分の車に乗り込もうとすると、彼は先に車を出して猛スピードで走り出した。
慌てて後を追うが、後部座席に寝かせた女性が気になって、どんどん引き離される。
まっすぐな道のずっと先に、彼の車の灯りが小さくなっていく。

ふと、前方の灯りの動きが大きく乱れ、不自然な形で止まった。
事故したとすぐにわかった。
すぐに追いついて事故車に駆け寄ると、脇のガードレールに突っ込んで止まっていた。
手前から何度かガードレールにぶつかっていたようだった。
彼はハンドルにもたれたままうつむいていた。
何か呟いているから、生きている。
これはもう手に負えないな。と判断し、救急車と警察に電話で連絡した。

ふと、彼の車の後部座席に人が乗っているのが見えた。
荷物なんかなく、人が一人いるだけ。
一目見て、さっきの倒れていた女性と同じ人だとわかった。
慌てて自分の車に駆け寄った。
後ろに寝かせていたはずの女性はいなくなっていた

彼の車に戻って、何があったのかなんとか聞き出した。

もともとは彼が女性を跳ねてしまったらしい。
女性が死んでいるのがわかったが、人が来たのでそいつにまかせてしまおうととっさに思ったらしい。
最初から自分の車に死体を乗せて、置き去りにして逃げるつもりだったそうだ。
逃げながらバックミラーで確認しようとしたら、座席にさっき死なせた彼女が座っているのが見えて、慌てて事故を起こしたらしい。

そんなことでひき逃げの罪を他人にかぶせられるのか疑問に思ったが、極度に慌ててる人の考えることはその程度なのかもしれない。
警察にどう言ったものか困ってしまったが、とりあえず正直にあったことと聞いた話をそのまま伝えた。
絶対に信じてもらえないと思ったが、現場で会った警官の対応はなんとも普通だった。
逆にこっちがびっくりして聞き返してしまった。
「こういう話はよくあるんですか?」
「不思議な話はいろいろ聞くから驚かないね。自分が処理するのは初めてだけど」
酒の席でちょくちょくこの手の話が出るらしい。
今回の件もネタにされるのだろうか。

報告書類にどう書くのか興味があったが、それは見せてもらえなかった。
posted by 黒鳥 at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 041〜050 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月18日

掲示板の向こう側

自分が体験した訳じゃないですけど、他人が体験している最中に遭遇したことがあります。

インターネットの掲示板で、不思議な話をみんなが持ち寄っている板があります。
たまに面白い話が投稿されているので、時々覗いていました。
その日見た話は、時刻を見ると数分前の投稿でした。


たった今帰宅するとき、道ばたで数人の子供達が遊んでいた。
ずいぶんな夜中なので、奇妙な感じだった。

という、たわいもない話でした。

その他には特に面白い話もなかったので、ちょっとした戯れに書き込んでみました。
「その子達はあなたの部屋まで付いてきてるかもね。気を付けて」
たった今この話を書き込んだ人が、まだ掲示板を覗いていて、これを読んだら驚くかも。
それくらいの軽い気持ちでした。
もう一つ、不安がらせるために書き込みしました。
「玄関でピンポン鳴っても、開けちゃだめですよ」

しばらくしてからもう一度掲示板を覗いてみると、新たな書き込みがありました。
「今チャイムが鳴った。開けなかったけど。開けたらどうなってたんだろう?」

でまかせで言った通りのことが起こったというので驚きました。
パソコンの向こうで怯えている人がいます。
けれども、こっちだってとまどっています。
軽いいたずらのつもりだったけど、実はいたずらされているのはこちらなのでしょうか。

「開けたらどうなってたんだろう」の言葉に返事を書きました。
「そりゃあ、中まで入ってきて大変なことに」
もう入って来たと返事があったら、どうしたらいいのでしょうか。

ひどく取り乱した様子で返信がありました。
「窓ガラスに手跡がついている。もう入って来ているかも知れない」という内容でした。

話が出来すぎているような気がしてきました。
こちらが書いた内容に合わせて、ありもしないことを書いているのではないでしょうか。
そう思うと、こちらはさっきまでと違い余裕が出てきました。

「部屋の四隅に盛り塩してみて」
まさか本当にやらないだろう。と思いつつ、そんなアドバイスを言ってみました。
盛り塩がどんな効果を持つのかなんて知りませんし。

しばらくしてまた返事がありました。
盛った塩の山がいつの間にか崩れている。
ちょっと目を離した隙に、目の前の盛り塩もつぶれている。

本当だったら怖いだろうな。と思いながら、わたしはこのやりとりにも飽きてきていました。
「もうどうしようもない。あきらめて」
そう書いて突き放し、あとのことはほったらかしで寝てしまいました。


夢を見ました。
人通りのない夜道で小さな子供達が輪になって歌を歌っている姿。
そこを大人が通りかかって、子供達が後に付いていきます。
玄関のドアで閉め出され、懸命に背伸びしてチャイムを押す子供。
元気のいい子が木に登って、ちょうど開いた窓から中に入って。
大人が机で何かしてる間に、玄関を開けて仲間を入れました。
そのうち大人がお皿に塩を盛り始めました。
一人がそれを蹴り飛ばすと大人がびっくりしています。
みんなまねして全部蹴飛ばしました。
また大人は机に向かったまま動かなくなりました。
子供達も退屈して寝てしまったようです。
朝になり、子供の一人がテレビを付けました。
楽しそうに早朝のアニメを見ています。

そこで目が覚めました。
夕べの出来事があったから、こんな夢を見たのでしょう。
途中までは掲示板のやりとりそのものでしたから。

掲示板を確認しましたが、その後の書き込みはありませんでした。
夕べの彼がまた見るかどうか分かりませんが、
「おはよう。アニメが終われば帰ると思うよ」
とだけ書いてパソコンを閉じました。
posted by 黒鳥 at 16:56| Comment(1) | TrackBack(0) | 041〜050 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年04月15日

おじいさんを看取る猫

わたしの実家でも猫を飼っていたことがあります。
その猫はひいおじいさんにすごくなついていました。
高齢だったのであまり部屋から出てこない人でしたが、たまに会うときはいつもその猫が一緒でした。

今になって思うと、ひいおじいさんは少し痴呆気味だったような気がします。
急に変な声を出したりするので、子供の頃のわたしはひいおじいさんが怖かったです。
一緒にいる猫も痩せていて可愛くなくて、頭を撫でてあげた記憶もありません。
家族のみんなも嫌いだったのでしょうか。誰もその猫と遊んだりしてた覚えがありません。
そう言えば、名前も知りませんでした。

そんなひいおじいさんは、わたしが小学校に上がる前に亡くなりました。
ダイオウジョウだったと親戚の人たちが言ってたのを覚えています。

部屋でお医者さんが臨終を看取っていたとき、その様子を廊下から覗き見しました。
ひいおじいさんが寝ている布団の上にその猫が座っていました。
お葬式の時も、その猫は祭壇のすぐそばでずっと座っていました。
試しにお膳で出てきたお刺身を持って行ってみたのですが、見向きもされませんでした。

実家は結構な山の中で、墓地も歩いていけるところにありました。
みんなで歩いてお墓にお骨を納めに行きます。
お骨を先頭にした行列の更にその先頭に、あの猫がちまちまと歩いていました。
よっぽどひいおじいさんが好きだったんだなぁと思いましたが、みんな静かに歩いているので私も黙っていました。

納骨を終えて家に戻って、ご飯を食べてお風呂に入って。
いつもひいおじいさんと一緒だったあの猫は、今はどこで過ごしているんだろう。
ふと疑問に思いました。

いつものひいおじいさんの部屋を覗いたけど、いませんでした。
お仏壇の部屋も探したけどいませんでした。
そして、子供だったわたしは、いつの間にか猫の存在も忘れていつもの生活に戻っていました。


今では私も大人になって、結婚して息子も産まれました。
息子がどうしてもとお願いするので、我が家でも猫を飼うことにしました。
家族でその話をしているとき、急にあのときの猫のことを思い出しました。
思い出すにつれて、あのときは感じなかったけど今思うと不思議なことがいろいろ出てきました。

痴呆だったおじいさんが、ちゃんと猫の世話をしていたはずがありません。
だけど、あの家で猫の餌をあげたり糞の始末をしていたのを見たことはありませんでした。

ある確信を持って、実家の母に電話で聞きました。
「うちって、昔猫を飼ってたよね?」
「ああ、いたよ。よく覚えてたね」
「その猫っていつまでいたの?」
「えっと・・おまえが歩き始めた頃だから・・何年前?」


「いや、わかった、ありがとう」
「懐かしいねぇ。おじじによくなついてて、猫死んじゃってからおじじがボケちゃって大変だったんだよ」


あの猫は、痴呆になってしまったひいおじいさんが心配で付き添っていたのでしょうか。
あれから20年以上経っています。
今でも仲良く一緒にいたらいいですね。

posted by 黒鳥 at 19:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 041〜050 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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