2004年11月09日

混ざり合う記憶

僕が1歳の時、両親は離婚しました。
それから母が一人で僕を育ててくれていました。
両親がそろってるときの記憶なんて無いので、それが当たり前だと思っていました。
他の家庭と少し違うと分かったのは、小学校に入ってからでした。

四年生のときのことです。
ある日、母に連れられて電車で出かけました。
平日だったけど、学校は休みました。
どこに何をしに行くのか、母は教えてくれませんでした。
当時は子供だったので、言われたとおりに付いていくだけでした。

一時間ほど電車に乗り、ある駅で降りました。
こんなに遠くまで来たのは初めてです。
でも、何か妙でした。

間違いなく、その街は初めて訪れた場所でした。
だけど街の様子が何となく分かるんです。
小さな駅前の商店街に並ぶ店や、貼ってあるポスター。
オモチャ屋さんにクレープ屋さん。
小さな川や橋から見える魚。
道ばたのお地蔵さん。
どれも、初めて見る気がしませんでした。

ある家の前を通りかかったとき、生け垣越しに庭が見えました。
そこには一匹の犬がいました。
犬はこちらに気づき、じっと見てます。
タロ?
自然に犬の名前が頭に浮かび、口に出していました。
母が急に立ち止まりました。

「あの犬、知ってるの?」
なんとなく・・・でも知ってるわけないよね・・

母が連れて行ったのは、その犬の家でした。
そこで初めて聞かされました。
僕に双子の兄がいたこと。
昨夜急に亡くなったこと。
両親が離婚して、母と僕がここに来たのは初めてであること。

それから、3日間そこの家に泊まり、お通夜やお葬式を済ませました。
兄の遺影は、確かに僕に似ていると思いました。
兄の友達はみんな、僕を見てびっくりしてました。
僕も内心びっくりしていました。
みんなの名前が分かるのです。

その街にいる間は、自分が自分でないような不思議な感覚で過ごしました。
地元に帰ってからは今まで通りでしたが、たまにおかしなことがあります。
初めて読んだマンガの内容が先に分かったり。
車の名前が分かるようにもなりました。
兄は車が好きだったそうです。
posted by 黒鳥 at 01:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 021〜030 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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