2004年10月12日

深夜の内線電話

以前勤めていた会社では、夜勤当番がありました。
毎日誰かしらが夕方出勤して翌朝までオフィスにいます。
何事もトラブルがなければ、朝までのんびり自分の仕事に専念できます。
誰も見ていないので、適当に居眠りしてても読書していても問題ありません。
だけど、金曜日の夜勤はみんなが嫌がる勤務でした。
みんなが飲みに行ってるときに拘束されるからだと思っていました。

女性だからと気を使ってくれてたのか、わたしに夜勤当番はなかなか回ってきませんでした。
特に金曜夜勤は入社してから2年間、一度もありませんでした。
しかし、あるときどうしても他の社員の出張等でわたしが金曜夜勤を受け持つときが来ました。
「女の子は金曜に泊まらせないようにしてるんだけどね」上司が言ってました。

他の曜日でたまには夜勤をやってたので、特に不安はありませんでした。
けれども、夜に通常勤務で帰宅する先輩がわたしに言いました。
「もしかしたら、夜中に内線が鳴るかも知れないけど、それは取らなくていいから」
どうせいつもの冗談で怖がらせてるだけだと思いました。

金曜日は皆帰宅が早く、10時前にはほとんど人がいなくなりました。
11時過ぎには他の部署を見て回り、残ってる人がいないのを確認して照明を落として来ました。
そして一人っきりでトラブルがないことを祈りつつ、週明けに提出する書類を作成していました。
すぐ手元にある電話は一度も鳴りませんでした。

夜勤では電話もなく話しかけてくる人もいないので、仕事に集中できます。
気がついたら夜中の2時を回っていました。
さすがに少し疲れたので、休憩しようと給湯室に向かいました。
カップにお湯を入れてる最中、近くで電話の音が聞こえました。
内線呼び出しの音でした。

電話が鳴ってる部署に着いて灯りをつけました。
まだ呼び出しが鳴っています。
電話機を覗き込むと、呼び出し元の内線番号が表示されています。
呼び出し元は、わたしの机でした

どうしようか迷っている間、ずっと電話は鳴り続けています。
しょうがないので、席に戻って確認してみることにしました。
鳴り続ける電話をそのままに、部署へ向かいました。

戻る途中、別の部署を通ります。
そこでも電話が鳴り始めました。
見るとやはり自席からです。
また別の部署でも鳴りました。
わたしが通るのを待ってるようでした。

席に戻っても、背後からは呼び出し音が聞こえます。
自席の電話は、受話器が外れていました。
それを取り上げた途端、呼び出し音がみんな消えました。
ディスプレイが通話中を示す表示に切り替わりました。
そして、受話器から子供の鳴き声が聞こえてきました。

わたしはすぐに受話器を置いて、そのまま荷物をまとめてビルを出ました。
外から見上げると、やはりオフィスは真っ暗です。
窓に人影が見えたような気がしましたが、気のせいかも知れません。

その日はまっすぐタクシーで帰宅し、週明けに上司へ報告しました。
職場放棄した理由を全部話しました。
信じてもらえないかと思いましたが、上司はそれについて何も言わず、軽いおしかりだけでした。
先輩にも話しました。
「前にいた女の子も、同じようなことを言っていた」
そう言ってました。
その後その女性は職場を辞めたそうです。

それからすぐにその職場を辞めました。
とてもその席で仕事を続けられる気分でなかったので。
辞めるとき、あの件に関するいろんな噂があることを教えてもらいました。

どれが真相なのかは分からないし、わたしにとってはどうでもいいことでした。
ただ、今でも時々電話を取るときに思い出します。
posted by 黒鳥 at 21:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 021〜030 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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