2004年09月30日

着信履歴

社内恋愛だった彼からの最後の電話を、私は取ることが出来ませんでした。

休日に私を迎えに来る途中、カーブを曲がりきれずにガードレールと電柱にぶつかり、ほとんど即死だったそうです。
彼は携帯を手に持っており、運転しながら私に電話をかけていたようです。
私の携帯には最後の着信履歴が残っていました。
悲しいのと申し訳ない気持ちとでいっぱいでしたが、彼のご両親は私を気づかってくれました。
人を巻き込まなかったのがせめてもだったと。

私たちの関係は社内でも知られていたので、いろんな人が心配してくれました。
辛くて仕事を辞めようとも思いましたが、じっとしているのが怖くて結局続けました。
彼の着信履歴を消したくなくて、携帯は解約して別のを持つようにしました。
以前の携帯はお守りとして持ち歩いてました。

それから泣きながらもどうにか一年ほど経ったときのことです。

職場の先輩が仕事帰りに車で家まで送ってくれました。
彼の事故の後から、何度も私の話し相手になって相談に乗ってくれた先輩です。
帰りが遅くなったときに送ってくれたことも何度かありました。

その夜、先輩はいつもと違う道を通りました。
そしてある場所で車を止めました。
一年前に彼が亡くなったそのカーブです。

先輩は話し始めました。
もう一年も経つんだからそろそろ彼を忘れた方がいいとか、前から私を好きだったとか、そんな話だったと思います。
けれどもこんな場所でそんなことを言う先輩に対して、無神経さと裏切られた感じとでかっとなってよく覚えていません。
ただ私は、先輩とそんな気持ちにはなれないことを告げました。

そのあと先輩はずっと黙って運転していました。
家に着いて私が降りようとしたとき、急に手を握ってきました。
手を引っ張られて身の危険を感じたその瞬間、私の携帯電話が鳴り始めました。
一瞬間が空いて、私は手を振り払って車を出ました。
先輩はそのまま黙って走り去りました。

家に着いてからもしばらく動転していましたが、お風呂に入って少し落ち着きました。
それから着信があったことを思い出して携帯を確認しました。
しかし、着信履歴がありません。
着信メロディを思い出し、慌てて古い携帯を確認すると、彼からの着信がありました
慌ててかけ直そうとしても、解約済みの携帯は発信できませんでした。

翌朝出勤すると、先輩が昨夜交通事故を起こしたと知らされました。
怪我は大したこと無いそうですが、それが彼が事故にあったあの場所だというので社内ではちょっとした騒ぎになっていました。
私の家から先輩の家に帰るまで、その場所は通りません。
なんでそこを通ったのか誰も分かりません。

命に別状はなかったのですが、先輩は頭に障害を負い、会話も出来ない状態でずっと入院する事になったそうです。
事故現場で救助された先輩は、携帯電話が砕けるほど強く握りしめていたそうです。
posted by 黒鳥 at 02:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 011〜020 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。