2004年08月30日

消える乗客

タクシー乗務員の仲間内で、危険な場所の噂がありました。
県内でも有名な、自殺の名所の橋にあるバス停です。
深夜にそのバス停付近から乗車する女性が、街に着くころにはいなくなっているというものです。
よくある話ですが、そんな体験談を年に1〜2回は伝え聞いていました。

ある晩にそのバス停を通りかかったとき、手をあげている3人組を見つけました。
夜の橋では、人影を見るだけでも果たして幽霊かと緊張するものです。
しかしその夜の乗客は、幽霊とはほど遠い明るい若者でした。

肝試し気分でやって来たものの、暗くてよく見えないし思ったより面白くないから帰ることにしたそうです。
しかし、道ばたにおいたバイクが無くなっており、しかたなくタクシーで帰ることにしたと言います。
男性は夜が明けたら警察に行って盗難届を出すとか言っています。
これが霊現象かもね。と女性は軽口を言っています。

わたしは脂汗を流していました。
彼らはバイクに乗って橋まで来たと言っています。
確かに、ヘルメットらしきものを持っていたような気がします。
カップルはバイクの処置についてずっと話し合っています。

しかし、彼らを乗せたとき、わたしは3人乗るのを確認しています
その3人目の声は一度も聞こえてきません。

わたしは必死で落ち着くように言い聞かせながら車を走らせました。
明るい町中についたときは本当にほっとしました。
目的のマンションに着いて、運賃を告げながら振り向きました。

車内には、女性が一人だけ。
しかも、寝ていました。
話しても怖がらせるだけだと思い、車内であったことは話しませんでした。
何事もなく女性は運賃を払い、帰っていきました。

その後は何も変わったこともなく、翌朝仕事を終えて帰宅する途中のこと。
自宅へ帰る途中であの橋を渡らなくてはなりません。
橋の手前のあのバス停そばで、早朝から若者が数名集まっていました。
道ばたにある破損したバイクへ花を捧げ、手を合わせていました。
posted by 黒鳥 at 02:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 011〜020 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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