子供の頃、ひいばあちゃんが入院した。
何の病気か知らなかったが、相当な高齢だったので危ない状態だったらしい。
じいちゃんと両親が病院に付き添っていた。
まだ小さかったぼくは家に残された。
ひいじいちゃんも一緒だった。
ひいじいちゃんは痴呆が進んでいて、事態が分かってないようだった。
そんなひいじいちゃんとぼくだけを残すわけにいかなかったのだろう。
ばあちゃんも家に残っていた。
ばあちゃんはずっと病院や親戚に電話をかけっぱなしだった。
ひいばあちゃんのことは心配だったが、ぼくはぼんやりとすることもなくドリフを見ていた。
ひいじいちゃんは自分の部屋で寝たきりだった。
そんなひいじいちゃんの部屋から、ガラスが割れる音と大きな声が聞こえてきた。
ぼくはびっくりしてばあちゃんを呼びに行き、ばあちゃんは慌てて電話を切って部屋へ向かった。
部屋では、ひいじいちゃんが大きな声で泣いていた。吠えるようだった。
いつも小さな声でぶつぶつ言ってる姿しか覚えてなかったが、そのときは初めて聞く大きな声だった。
部屋は古い木枠の窓があった。
今時の窓ガラスと違い、小さくて薄いガラスが何枚も張ってあるタイプだった。
その窓ガラスが全部割れていた。
ばあちゃんがひいじいちゃんに何か話しかけてる間に居間で電話が鳴った。
ばあちゃんの手が離せないので僕が出た。
電話は父さんからで、今ひいばあちゃんが亡くなったという知らせだった。
家で起こっていることを話したら、
「じいちゃんには、ばあちゃんが亡くなったことが分かったんだろうな」と言っていた。
あとで話を聞いた人も、そんな感想を口々に言っていた。
悲しくて動転して窓ガラスを割って暴れたんだろうと。
それからちょうど一週間後、ひいじいちゃんも静かに亡くなった。
ひいばあちゃんが亡くなったことをひいじいちゃんがその時知ったのかどうか。
それは今となってはもう分からない。
ただ、気になることがあった。
あのとき、ひいじいちゃんの声と物音を聞いたのはぼくだった。
はっきり聞こえたので間違いない。
ガラスが割れる音は一度だけだった。
たくさんの窓ガラスが全部割れていたのに。
窓ガラスを割ったのはひいじいちゃんじゃなかったと思う。
一度に全部のガラスを割った何かがあったんだと思う。
ひいばあちゃんの霊が来たんだとしたら、そんなことをするだろうか。
もっと悪い何かがやって来たんじゃないだろうか。
もう確かめようがないが、そんな気がしている。
2004年08月24日
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