2005年03月09日

次に亡くなる家

去年、仕出し弁当屋で配達のバイトをしていた。
たまに妙な客からの注文があった。
怪しげなセミナーだったり、何かの撮影現場だったり。
お葬式の会場に運ぶことも多かった。

あるとき、郊外の小さな町へ弁当を届けに行った。
そこでお葬式が行われていた。
よくあるお葬式で何も変わったことはなかったのだが。

次の週にも、その地区へ弁当を届けに行った。
やっぱりお葬式だった。
代金を払ってくれたのは、前回と同じおばさんだった。
前回は地区の施設を使ったお葬式だったが、今回は故人の自宅らしかった。

その次の週はシフトに入っていなかったが、更に翌週はまたもその地区へ配達に行った。
あとで帳簿を見せてもらったら、5週連続で注文が入っていた。
お客さんの名前も注文の数もいつも同じだった。
注文しているのはあのおばさんかも知れない。

今回も故人の自宅でのお葬式で、あのおばさんが会計をしてくれた。
聞いちゃいけないような気もしたけど、つい聞いてしまった。
「最近、こちらでお葬式が多くないですか?」
一瞬、おばさんの顔がこわばったように感じた。

おばさんはだまって空を見上げた後、おかしな事を言った。
「そうだね。毎年この時期はね」

「毎年なんですか?」

次はあの家だよ

おばさんは無表情に通りの向こうのある家を指さした。
見ると、その家の玄関脇に赤い30cm四方くらいの紙が貼ってあった。
何か丸い記号のようなものが書いてあった。

そう言えば。
今いるこの家も、玄関に紙が貼ってあった。
「あの赤い紙は何なんですか?」
「そういうシルシだよ」

もっと聞こうと思ったが、「もういいから帰りなさい」と言われてしまった。
そのあと、やはりその地区で同じおばさんから弁当の注文があったらしい。
気味が悪かったので、自分はその地区への配達を避けた。

しばらくしてそのバイトはやめたので、弁当の注文がいつまで続いていたのかはわからない。
おばさんの話が本当なら、今年もあそこで毎週お葬式が行われているのだろう。
posted by 黒鳥 at 23:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 031〜040 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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