2005年02月04日

3年越しのメッセージ

ある晩帰宅したら、自宅の電話機がおかしなことになっていた。
留守電にメッセージが残されたことを示す赤いランプが点滅している。
それが、いつもの規則正しい点滅ではなく、不規則な明滅を繰り返している。
不規則というか、リズムを刻んでいるようだった。
トントン   トントン   トントン   と。

試しにメッセージを再生してみた。
いつもなら「メッセージは○件です」と言う音声が最初に流れるのだが、その日は違った。
ピーと発信音がして、聞き取れない小さな声が聞こえて、切れた。
「午前11時3分です」電話機が音声を発した。

この手の無言に近いメッセージは珍しくもない。
何かの勧誘電話だったんだろう。
続けてまた同じような無言のメッセージ。
最初の音声案内がなかったから、一体何件再生されるのか分からない。
メッセージを再生してる間、赤い灯りはずっとあの点滅を繰り返していた。

そのうち、録音時刻の案内がおかしくなってきた。
時刻が前後している。
さっきは午後6時のメッセージだったのに、今のはまた午前11時まで戻っている。

どうやら録音テープに残ってた古いメッセージまで再生しているようだ。
いよいよ電話機の故障らしい。
8年くらい使ってたから、壊れてもおかしくない。

突然、はっきり聞き取れる声が流れてきた。
電話機の合成音声ではなく、本物の女性の声だった。
女性は電話口でしきりと謝っている。

思い出した。この声。
3年前に別れた彼女だった。
心臓が弱くて病弱な子で、そのせいかわがままな子だった。
ある日電話で口論して、一方的に電話を切ってそのまま外出したんだった。
携帯にかけられないよう、電源も切って。

帰宅したら留守電が残っていた。
その子からだと分かった瞬間、再生を止めてそれっきりだった。
それからお互い連絡を取ることもなく、喧嘩から自然消滅した形だった。
あのとき最後まで聞かなかった留守電のメッセージが、3年たった今頃流れてきた。

聞くに堪えないのですぐ止めようとした。
が、止まらない。
停止ボタンを押してもメッセージの再生が止まらない。

電話の向こうの声は3年前の声なのだが、謝りながら泣く声は耐えられない。
そのうち、泣き声とともに妙な音も聞こえてきた。
とっくん   とっくん  
心臓の音に聞こえた。
はじめはかすかな音に気が付いたのだが、だんだん大きくなっていた。
とんとん   とんとん  
電話機の赤いランプとシンクロしていた。

もしかして、一番最初から、この音は小さくなっていたのだろうか。

コンセントを引っこ抜いた。
それでも、音とランプは消えなかった。
電話機を床に叩きつけたら、ようやく鳴りやんだ。

メッセージに込められた何かが、たまたま再生されてしまったときに息を吹き返したのか。
そんなメッセージが残っていたから電話機がおかしくなったのか。
なんで今頃こんなことになったのか。
彼女とは3年連絡を取っていない。
今どうしてるのか、知る術もない。
posted by 黒鳥 at 02:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 031〜040 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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