2005年01月25日

占有席

学生の頃、駅前のファーストフードで試験勉強をしに行った。
夜の空いてる時間帯に。
そこは友達がバイトしている店で、夜は静かだから勉強しやすいと聞いていた。

2階の客席で空いてる席を探す。
離れたところに勉強してる人が4人。
それぞれ音楽を聴きながら勉強してたり、時々携帯をチェックしながら勉強していたり。

その中に一人、ずっと顔も上げず集中してる女の人がいた。
横顔がちょっとキレイだったので、なんとなくちらちらと目が行ってしまう。
けれど、何度見てもその人は下を向いて一心に何か書いてるだけだった。

トイレに立って戻るとき、妙なことに気が付いた。
その店は、椅子の席やソファタイプの席などがある。
例の女性はソファの席で、後ろは壁になっていた。
さらに席の隣には、取り囲むようにテーブルが置いてあった。
席を立って移動するには、テーブルを乗り越えるか、どかさないといけない。

よっぽど神経質で、自分のエリアを作ってしまいたかったんだろうか。
ちょっと引いた。

次の夜もその店に勉強しに行った。
やっぱり静かで勉強ははかどるのだが、あの女性がまた同じように席を作っていたのが気になった。
前の晩もそうだったが、その日も深夜にぼくが帰宅とき、彼女はまだ勉強を続けていた。


さらに次の日の昼、他の友人とその店に行くことなった。
これで3日連続だと笑っていた。

夜とは違ってにぎやかな店内だったが、ある一角だけ空いている。
例の女性が座っていたところ。
夜と同じように、その座席はテーブルで閉ざされていた。
女性はいなかったけど。
周りの席にも人はいなかった。
ぼくらもなんとなくもっと混んでる方で食事した。

食べ終わってからしばらくおしゃべりして帰るとき、バイトの友人が出勤してきた。
挨拶のついでに2階の座席について聞いてみた。

「あれね。なんでだろ。あのままにしておけって先輩に言われてるし」
との答えだった。
「ず〜っと掃除もしてないから、ほこりがたまってて汚いんだけどね」
とも言われた。

慌ててもう一度2階の座席を見に行った。
テーブルにも座席にも、うっすらとほこりが溜まっていた。
指でなぞると白くほこりが付いた。
そして、テーブルには細かく何か文字が書いてあるのに気が付いた。

ざっと2〜3行読んだだけだが、乱れた文字で人生のつまらなさを書いてあるようだった。
そして「死にたい」と言う文字を見つけたとき、それ以上読むのをやめた。

知らなくていいことを知ってしまった気がした。
次に店に行って、あの女性がいたら、目が合ってしまうような気がした。
だから、その日から夜の勉強はやめた。
posted by 黒鳥 at 21:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 031〜040 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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